ぴったりの物
赤瀬川原平 

 隙間を生きている生きものがいる。屋根裏の梁の隙間にぴったりの形で生きている蛇。人間の腸の隙間にぴったりの形で生きている回虫。床下の柱の隙間にぴったりの形で生きている白蟻の群。それを見てしまった時の感触が郷津作品には染み込んでいる。まだ誰も見つけていなかった、あるいは、そもそも、この世になかった隙間がまるで作り出すように見つけられて、郷津レンズの光路を通り抜けて、わずかながら飛び出した。隙間家具ではない、隙間生命体の登場である。

 


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